漢詩作りのための雑記

漢詩は読むのも作るのも深い沼

漢詩の中の中国:高い台に登りがち

 

『詩詞里的中国』という本を買いました。

漢詩における詩・詞の中にある中国という解説書。

 

本のカバーには…

「人生のあらゆる経験、境遇、姿、道理はすべて唐詩の中に隠されている」

 

魯迅曰く「すべての素晴らしい詩は、唐にはすでに作り終わっている」

 

目次を見てみると…

第一章:懐古

第二章:望月(月を望む)

第三章:羇旅(きりょ)

第四章:登高(高いところに登る)

第五章:辺塞

 

高いところにのぼるのって、漢詩世界らしいなあと。

 

第四章を読んでいると、いろいろ登っているなあ。

「登袞州城楼」  杜甫
東郡趨庭日     東郡 庭を趨るの日
南楼縦目初     南楼 目を縦にするの初め
浮雲連海岱     浮雲 海岱に連なり
平野入青徐     平野 青徐に入る
孤嶂秦碑在     孤嶂には秦碑在り
荒城魯殿餘     荒城には魯殿餘る
従来多古意     従来 古意 多し
臨眺独躊躇     臨眺して独り躊躇す

 

楼(建物)にもよく登りますよね。

「登鸛鵲楼」(鸛鵲楼に登る)

        暢当
 迥臨飛鳥上  迥はるかに臨む 飛鳥の上
 高出世塵間  高く出づ 世塵の間
 天勢囲平野  天勢は平野を囲み
 河流入断山  河流は断山に入る

 

この少し後に…

「登鸛鵲楼」(鸛鵲楼に登る)

        王之渙
 白日依山尽  白日 山に依りて尽き
 黄河入海流  黄河 海に入りて流る
 欲窮千里目  千里の目を窮めんと欲して
 更上一層楼  更に上のぼる

 

鸛鵲楼:かんじゃくろう

所在地:山西省運城市

北周時代に建築が始まり、金元光元年(1222年)に火災で焼失

 

 

本では「望黄鶴楼」となっていましたが、捜韻で調べてみたら「望黄鶴」のよう。

望黄鶴山(760年) 盛唐 · 李白
東望黄鶴山,雄雄半空出。
四面生白云,中峰倚紅日。
岩峦行穹跨,峰嶂亦冥密。
頗聞列仙人,于此学飛術。
一朝向蓬海,千載空石室。
金灶生烟埃,玉潭秘清谧。
地古遺草木,庭寒老芝朮。
蹇予羡攀跻,因欲保閑逸。
観奇遍諸岳,兹岭不可匹。
結心寄青松,永悟客情華。

 

李白の黄鶴楼で有名なのはこちらですね:

「黄鶴楼送孟浩然之広陵」李白 

故人西辞黄鶴楼

煙花三月下揚州

孤帆遠影碧空尽

唯見長江天際流。

 

黄鶴楼:こうかくろう

武漢市武昌区にかつて存在した楼閣。

三国時代の223年、呉の孫権によって軍事目的の物見櫓として建築された。

黄鶴楼は幾度も焼失と再建が繰り返され、現在は元の地点から約1キロ離れた位置に再建された楼閣がある。

 

 

『詩詞里的中国』

天地出版社 39.8元

購入したのは唐詩1。唐詩2と宋詩も出版されています。