漢詩作りのための雑記

漢詩は読むのも作るのも深い沼

アニメ映画『長安三万里』の公式本で全44詩を解説

現在、中国でヒット中の唐代の詩人・高適を主役としたアニメ映画『長安三万里』。

その紹介はひとつ前に書きましたが…

kanshi.hatenablog.com

 

映画の中で次々と漢詩が出てきて、少しメモをしていたのですが、とても全部は覚えきれず。

気になるなあと思っていたら、映画公式本が出ました。

映画に出ていた漢詩を全て解説しています。

『長安詩選』中信出版集団 59元

 

本が届いてみてみたら、映画の中で全部で42首の詩が出ていたそうです。

盛りだくさんでしたね。

 

本を開いてみると、最初に紹介されているのはやはり高適の詩でした。

高適の詩で現在まで伝わっているものは250首あまり。

 

映画の中で最初に登場する詩も、これでした。

 

別董大 二首其一   高適

   千里黄雲白日曛 千里の黄雲 白日 曛(くら)し

   北風吹雁雪紛紛 北風 雁を吹ふいて 雪紛々

   莫愁前路無知己 愁うる莫かれ 前路 知己 無きを

   天下誰人不識君 天下 誰人か 君を識らざらん

 

この詩、最初が「十里」になっているバージョンもあるようですが、

映画と本では「千里」になっていました。

 

映画では、この詩をきっかけに高適による李白との青春物語の回想が始まります。

李白(や同時代の詩人たちの)厳しい人生を予感させながら、最後にはその詩によって名を後世にまで残すことをうたっているとみることができるのかもしれません。

転句にある「知己」という言葉が、友として同時代を生きた高適と李白との関係性を指し示す言葉であるのかもしれません。(と韓先生が書籍にて解説されていました)

 

あと、41首。少しずつ読み進めたいと思います。

 

本には映画のシーンからの挿絵もあり。

これは長安で成功した李白が、遊郭で酔っぱら様子。

酔っても詩が次々に口から出てきて止まらない天才ぶり。