韻を踏む話の続きです。
すべての漢字を106のグループに分類した中で、
平声に属する30グループの中から、同じグループ内の漢字で韻を踏むのが原則。
(この平声は、現代中国語の第一声とは異なり、宋代の発音を元にして分類されたものです)
平声の30グループとは…
平声 |
上平 |
1東 |
2冬 |
3江 |
4支 |
5微 |
6魚 |
7虞 |
8斉 |
9佳 |
10灰 |
11真 |
12文 |
13元 |
14寒 |
15刪 |
下平 |
1先 |
2蕭 |
3肴 |
4豪 |
5歌 |
6麻 |
7陽 |
8庚 |
9青 |
10蒸 |
11尤 |
12侵 |
13覃 |
14塩 |
15咸 |
これを杜甫の「絶句」で見てみると…
「絶句」杜甫
江碧鳥愈白 江は碧にして鳥は愈よ白く
山青花欲然 山は青くして花は燃えんと欲す
今春看又過 今春看すみす又過ぐ
何日是帰年 何れの日か 是れ帰年ならん
韻を踏んでいる「然」と「年」は、どちらも平声・下平「1先」のグループの漢字なのです。
この「先」というグループにどんな漢字があるかというと…
年 天 然 前 辺 仙 船 眠 泉 賢 伝 煙 田 怜 川 篇 銭 縁 弦 連 妍 筵 先 全 禅 偏 鮮 鞭 遷 蓮 編 千 綿 肩 堅 旋 娟 玄 宣 蝉 牽 権 延 便…
韻を踏む時には、この同じグループの中から漢字を選ぶのが原則。
なんとなく「…ん」の発音の漢字が多いようですが、それだけでは判断ができず。
実は漢和辞典には、ちゃんと圏点と、そこに106のうちのどのグループに属する漢字か書いてあるんです。
例えば、「然」のページを見ると…
電子辞書でも、分かるように表示が出ます。
それにしても
年 天 然 前 辺 仙 船 眠 泉 賢 伝 煙 田 怜 川 篇 銭 縁 弦 連 妍 筵 先 全 禅 偏 鮮 鞭 遷 蓮 編 千 綿 肩 堅 旋 娟 玄 宣 蝉 牽 権 延 便…
の中から2つを選んで韻を踏むというのは、なかなかの縛りだなあと。
さらに、これが七言絶句になると、1、2、4句で韻を踏むのが通例で、同じグループから3つ選んで構成しなければならないという…
「1先」は、比較的漢字の多いグループですが、極端に漢字が少ないグループもあったりで、漢詩作りにはまずどの韻のグループを選択するかが最初にあると言ってもよいかもしれません。
この韻の漢字グループは、(一部音の近さは感じるものの)日本語の音読みとも現代中国語とも違うので、どのグループにどの漢字があるかは、漢和辞典のほかに詩語集などで確認するのが効率的。
2022年に石川忠久先生の監修で新しい詩語集も出版されています。
すでに韻の漢字選びだけでおなかがいっぱいになっていますが、
漢詩の音を整えるルールはまだもう少し続きます。