漢詩作りのための雑記

漢詩は読むのも作るのも深い沼

三溪園での吟行会に行ってきました

kanshi.hatenablog.com

2024年10月27日にて開催。

横浜駅からバスに乗って三溪園へ。

当日はちょうど横浜マラソン2024 が行われていて、交通規制がすごかったですが、バスからマラソンの走る様子を見かけ、臨場感がありましたね。

「秋高」「長跑」「呼声」…のような言葉を思い浮かべつつ。

気持ちよい秋晴れの三溪園に到着。

(帰りがけは雨になりましたが)

参加人数がたくさん!

10人ずつくらいのグループに分かれて散策。

三溪園、趣がありますね。

さすが茶人でもある実業家・原三溪(原 富太郎)氏が、思い入れたっぷりに造園しただけのことはあり、細部にまで贅が尽くされ、洗練されています。

すばらしい茶室がいくつも!あり。

いつか三溪園でのお茶会に参加してみたいですね。

各グループにボランティアガイドの方がついて、丁寧に各所をご説明してくださいました。

ボランティアガイドの方は、それぞれで資料ファイルを作って持参されているんですね。勉強家だなあと。

茶花でもある「フジバカマ」(藤袴)も咲いていました。

中国語では「山佩蘭」。

捜韻を見てみると、「佩蘭」で2000以上の用例がありますね。

古代から漢詩に詠まれているよう。

 

白雲邸

原三溪が夫人と暮らすために建てた隠居所。

「白雲邸」の扁額は近代三茶人の一人・松永耳庵(安左エ門)の揮毫によるもの。

 

雲は原三溪にとってひとつのキーワードだったそうで、自身の漢詩にも詠われています。

 

「坐見雲」

 富貴独自来

 去時亦自去

 恰似白雲心

 曾無定住処

 小院秋之夕

 葉深人到稀

 石泉細如語

 独坐見雲帰

出自・三溪園のサイト:坐見雲 - 収蔵美術品 | 横浜 三溪園

 

行く前に三溪園のことを少し調べていたら、原三溪はかなりの漢詩を作っていたと初めて知り。

『三溪集』五言絶句ほか漢詩が135首、和歌20首、小唄1に跋文1章を収録しています

No.166 原三溪 -文化人としての足跡-(2019年4月発行) | 神奈川県立の図書館

 

ほかにはどんな漢詩があるのか、ネットで調べてみたのですが、なかなか出てこず。

『三溪集』も入手が困難そうだなあと思って、吟行会に参加したのですが…

 

関東大学国際文化部比較文化学科の鄧捷教授の「原三溪の文人趣味・「出世」志向と三溪園」の講演があり!

(当日までこの講演があることは知らなかったので、うれしいびっくりです)

三溪の文人趣味、出世志向、そして生き様などを詠う原三溪の漢詩を紹介いただきました。

昔の文化人は、漢詩も茶もたしなんでいたんだなあと。

「偶感」や「偶吟」などのタイトルで、人生の節々で漢詩を作っていたのも感慨深く。

かくありたいものです。

 

49歳の時の「偶感」

「偶感」

 自憐霜鬢老塵機

 四十九年昨夢非

 今日猶餘江上物

 斜風細雨一蓑衣

 

※江上物…当時海のすぐそばにあった三溪園のことか

 

49歳にして、人生を振り返る… 

精神の成熟ぶりを感じます。自分だったらどんな詩が作れるのだろうと。

 

当日の講演会が、神奈川県漢詩連盟のYOUTUBEチャンネルで公開されていました。


www.youtube.com

 

そうそう、「吟行会」ということで、みんなで一句ずつ詠み、連句を作るのかなあと思っていたのですが、当日の吟行はなく。

リアルな漢詩の吟行会ってどんな感じかなと思っていたので、少々残念。

ですが、漢詩散策として楽しい1日でした。

いくつか集めたキーワードを生かして、漢詩作りをしてみようと思います。

 

お昼も三溪園で。

三溪そば(細いうどん)も原三溪が生み出したものだそう。

見た目がはなやか。少し甘いやさしい味がしました。

 

紅葉にはまだ少し早い時期でした。

もう少ししたら、きれいに色づきそうです。