漢詩作りのための雑記

漢詩は読むのも作るのも深い沼

「廬山」をうたった漢詩ってどれくらいあるの?

漢詩クイズで、江西省にある「廬山」の詩が出てきました。

地図を見ると廬山は、上海から長江をさかのぼっていったところにあるようですね。

 

クイズにもなっていたのは、李白の三千尺の滝で有名なこの詩。

「望廬山瀑布」 廬山の瀑布を望む 

     李白 
日照香炉生紫煙 日は香炉を照らして紫煙を生ず、
遥看瀑布挂前川 遥かに看(み)る瀑布の前川(ぜんせん)に挂かるを。
飛流直下三千尺 飛流直下(ひりゅうちょっか) 三千尺(さんぜんじゃく)
疑是銀河落九天 疑うらくは是(こ)れ銀河の九天より落つるかと

 

「廬山」って、そういえば漢詩を読んでいると時々目にするなあと。

いったい歴代でどれくらいの「廬山」の漢詩があるのだろうと検索してみました。

知識図譜(https://cnkgraph.com/)というサイトで廬山を検索すると、関連詩は5577首。

詩のタイトルに出てくるのが1564首、詩の本文に出てくるのは3600首という驚きの結果。孟浩然1首、李白16首、白居易1首、蘇軾6首など。

様々な時代の詩人たちが歌っていた場所なのだなあと。

 

孟浩然の一首を開いてみると、721年、33歳の時のこの詩が出てきました。

「晩泊潯陽望香廬山」孟浩然 (五言律詩)
掛席幾千里 名山都未逢 席を掛けて幾千里、名山 都て未だ逢はず。
泊舟潯陽郭 始見香爐峰 舟を潯陽の郭に泊め、始めて香爐峰を見たり。
嘗讀遠公傳 永懷塵外蹤 嘗て遠公の伝を読み、永く塵外の蹤を懐く。
東林精舍近 日暮但聞鐘 東林精舎近く、日暮れて但だ鐘を聞けり。
『高僧伝』巻六『晋廬山釈慧遠』

 

ほかにも、「廬山」という地名そのものが出てこないので、上記の検索からは漏れてると考えられる詩もあります。

例えば…

「飲酒」陶淵明 (五言古詩)

結盧在人境 盧(いほり)を結んで人境(じんきょう)に在り

而無車馬喧 而(しか)も車馬の喧(かしまし)き無し

問君何能爾 君に問ふ何ぞ能く爾(しか)ると

心遠地自偏 心遠くして地自から偏なればなり

采菊東籬下 菊を采(と)る東籬(とうり)の下

悠然見南山 悠然として南山を見る

山気日夕佳  山気日夕に佳(か)なり

飛鳥相与還 飛鳥相与(とも)に還る

此中有真意 此の中に真意有り

欲弁已忘言 弁ぜんと欲すれば已に言を忘る

 

この南山とは「廬山」のこと。

陶淵明は、潯陽(江西省九江)の出身。

役人を辞して田舎の田園で隠居暮らしの中で、ふと目に入ってくる山の姿は、やはり「廬山」なのですね。

 

南山は『詩経』に「南山の寿のごとく、 騫(か)けず崩れず」とあり、長寿の象徴でもあるとのこと。「南山の寿」と言うことも。

 

いつか廬山に行ってみたいし、廬山の詩を読んでみたいですね。